まんじゅう
20年以上にわたり、まんじゅう氏は人形やカメラ、機材でいっぱいの重いバッグを携えて日本中を旅し、現実でありながらも夢のような風景を探し求めてきました。その写真は、技術的な精密さと静かな情感のバランスを保ちながら、ありふれた場所を、記憶と光、そして繊細な物語に満ちた深い雰囲気を持つ情景へと変え上げています。今回の対談では、芸術的な発展、AIの役割、屋外撮影の物理的な現実、そして長年にわたり創作活動を続けざるを得ない理由について振り返っています。
2021年のフィグボのインタビュー以来、ご自身の写真表現はどのように発展してきたとお考えですか?
2021年から、もう5年も経ったなんて信じられません。時間が経つのは本当に早いですね。 写真家としての歩みという意味では、私は「合格点」とは言えないかもしれません。 ですが、ドール撮影を心から愛し続けてきた結果、現在はドールメーカーの一員として働いています。 自分の努力が認められ、その成果が実生活の支えになっていることを、とても嬉しく思っています。
仕事のメインは撮影そのものではありませんが、実はそれが自分にとっては良いバランスなんです。 プライベートにおいて、ドールを撮影することは今でも生活の重要な要素であり続けています。だからこそ、情熱を失わずに活動を続けてこられました。
時々、自分自身に問いかけることがあります。「ねえ、まんじゅう。君はもう少なくとも20年以上もドールを撮り続けてきたんだ。もう休んでもいいんじゃない?」と。 それに、今は素晴らしい写真を撮る人がたくさんいます。私が撮らなくても、誰も困らないかもしれません。
それでも、やはり私は何かを作り上げ、皆さんに見ていただきたいという気持ちがあります。 昨年、日本のコミックマーケット106で、ようやく自分にとって初めての「写真集」を出版することができました。 そして、今年の夏に開催されるコミックマーケット108では、2冊目を出そうと考えています。 今は、その新しい写真集に向けて準備を進めているところです。
あなたのスタイルの中で、一貫して変わっていない点はどこですか?また、ここ数年でどのような変化がありましたか?
この5年間も、もちろん創作活動はずっと続けてきました。変わった点があるとすれば、AIを写真のレタッチに取り入れ始めたことと、アニメやゲームのキャラクタードールの撮影割合が増えたことでしょうか。
構図についても、心境の変化がありました。以前は壮大で美しい背景を重視し、人物を背景の一部として溶け込ませるような、引きの構図(人物が小さく背景の比重が大きい)を好んでいました。 ですが今は、画面における人物の比重が高くなっています。背景はどちらかといえば「引き立て役」の位置付けです。 というのも、レタッチでドールの筋肉や骨格を自分の理想の形に整えるのが私のこだわりなのですが、人物を大きく写すことで、そうした細かな強調ポイントを皆さんに見てほしいと考えるようになったからです。
「君はドールを美しい景色の中に置くのが好きだったんじゃないのか?」と思う人もいるかもしれません。 それについては、今でも変わらず大好きだと言いたいです。だから今でもできれば背景が多めな作品を撮ります。 なぜかというと、可能であれば、私が行ったことのある場所へ、写真を通して観る人も一緒に連れていきたいと思っているからです。
5年が経ち、私も40歳を超えました。老眼も始まりましたが、それでも数十キロの機材を担いで撮影に出かけます。自分が撮った景色が、その苦労をしてまで足を運んだ価値のあるものであってほしいと、心から願っています。
2021年以降、写真家としての目標は変わってきましたか?
2025年までの私の目標は、自分自身の写真集を出版することでした。そして昨年、ようやくその目標を達成することができました。
今の目標は、50歳まで撮影を続けることです。私は現在42歳。撮影に出かけるたびに、荷物がどんどん重くなっているように感じます(笑)。 私は自分の車を持っていないので、撮影の際はいつも公共交通機関を利用しています。日本の都市部の交通網は非常に便利で正確ですが、撮影はたいてい田舎で行うことが多いものです。 そのため、時には重い荷物を背負って山を登ったり、長い距離を歩いたりしなければなりません。 ですが、実はそれも悪くないなと思っています。運動不足を解消する良い機会になりますからね。
現在、ロケハンや準備にはどのように取り組んでいますか?
ある場所が撮影に適しているか調べる際、私は主に2つのツールを使います。Google マップとX(Twitter)です。
もしGoogle マップのストリートビューがなかったら、リサーチは極めて困難になっていたでしょう。ストリートビューからは、理想の背景があるか、人通りはどのくらいか、ドールや三脚を置くスペースはあるか、といった情報が得られます。特に「物を置くスペースの有無」を事前に確認できるのは非常に重要です。以前なら現地に行かなければ分からなかったことが、今では携帯やパソコンの画面で確認できます。日本はストリートビューの範囲が広く、現場だけでなくそこに至る経路や入口、駐車の可否まで確認できるので、これなしでの遠方撮影はまさに「冒険」になってしまいます。
Xでは、流れてくる素敵な写真から興味を持った地点を特定し、Google マップに保存しています。いつかその付近を訪れる時のために備えるのです。また、日本人はXを日記のように使う習慣があるため、キーワード検索で「今、その場所がどうなっているか」を知ることができます。これは桜などの季節性の植物を撮る際に非常に役立ちます。家を出ることなく、どこで桜が咲いているか、どれほど混雑しているかを確認できるからです。人目が気になるドール撮影において、人出の少ない時間と場所を選ぶのは不可欠なプロセスです。
機材については、通常以下のようなものを持ち歩いています。 カメラ(予備電池、予備カード含む)、レンズ、ストロボカラーフィルター、ワイヤレスフラッシュトリガー、レリーズケーブル、ストロボ2台(予備電池)、トラベル三脚2本、ミニ三脚、三脚用延長ポール、レフ板(半透明、黒、白、金の4way)、折り畳み椅子、裏面が銀色の傘、ドールスタンド、各種クリップ、針金、ポップ用クリップ。
特におすすめしたいのは「裏面が銀色の傘」と「椅子」です。傘はスタジオにあるアンブレラと同じ役割を果たしますが、あくまで普通の傘なので、夏は日除け、雨の日は雨具として使えます。これは台湾で購入して10年以上愛用している逸品です。また、折り畳み椅子は設営や撮影時に重宝します。ずっとしゃがみ込む必要がなくなるため足首の健康に良いだけでなく、視線が低くなることでドールと背景のバランスが把握しやすくなります。立ったまま地面のドールを配置するより、座って同じ目線で調整する方が、結果的に構図の精度も高まり、体も楽になりますよ。
アイデアから現場まで
なぜかというと、可能であれば、私が行ったことのある場所へ、写真を通して観る人も一緒に連れていきたいと思っているからです。
新しい作品を作る際、普段最初に決まるのは、コンセプト、ロケーション、それとも人形そのものですか?
これは本当に良い質問ですね。 野外撮影には、考慮すべき要素がたくさんあります。ドールの衣装や小物、撮影地の景観、光の加減や天気、あるいは「こんな画面を撮りたい」という明確なイメージ。 もし頭の中にイメージが浮かんでから撮影場所を探し始めたら、間に合わないことも多いのです。
ですから、私にとっての「第一歩」は、良さそうな撮影場所をGoogleの「マイマップ」に保存しておくことです。その際、昼と夜どちらが綺麗か、どんな景色か、他の人の参考写真はあるか、といった情報を細かくメモしておきます。情報は主にX(Twitter)やYouTubeで収集しています。 こうして場所のデータベースを作っておけば、いざ「撮りたい」というアイデアが浮かんだ時に、場所探しに時間を取られずに済みます。
次に、私は小道具(ミニチュア)から構図を考えることが多いです。 日本では毎月、膨大な種類のガチャガチャが発売されますよね。ミニチュアのパン、コーラ、お菓子など。私はよくお店を覗いて、ドール撮影に使えそうなものがないか探しています。 また、ドールイベントへの参加も欠かせません。衣装だけでなく、魅力的な小道具がたくさん見つかるからです。 もし「いつも同じようなポーズになってしまう」と悩んでいるなら、小物から着想を得ることをお勧めします。ドールがなぜその小物を手に取っているのか、その理由を考えてみてください。周囲の環境や他のキャラクターとどんなやり取りが生まれるか。そう考えることで、より多くのインスピレーションが湧いてくるはずです。
撮影の構図は事前に細かく計画していますか、それとも撮影中に即興で対応する余地を残していますか?
もし撮影前に頭の中で構図が決まっているなら、基本的にはその構図に合わせて荷物を準備します。特に具体的なアイデアがない場合は、先ほどお話ししたようにGoogle マップやXで事前にロケ地を確認し、その場所に合いそうなドールのヘッド、ウィッグ、衣装、小道具を用意します。
「ヘッドだけ?」と思われるかもしれませんが、実は私は車を持っていないため、旅行に持っていける荷物は非常に限られています。カメラ、レンズ、三脚だけで10kgを超えてしまいます。例えば2泊3日の旅行で、1日に2〜3カ所のスポットを回る場合、残りのスペースに入れられるのはドールのボディ2〜3体、ヘッド5つ、ウィッグ4つ、衣装や靴・靴下を5〜6セット、それにアクセサリーや小道具といった具合です。遠出の際は、いつも荷物が限界までパンパンな状態です。 持っていけるボディの数には限りがあるため、撮影スポットごとにヘッドや衣装、ウィッグを付け替えて対応しています。
そして現場に到着してから、実際の構図や光の状況を見てドールのポージングを決めます。ただ、これまでの経験上、事前に構図を決めておいた時の方が、結果として満足のいく写真が撮れることが多いですね。撮影時間の短縮にもつながりますし。
すべての写真家が生涯学び続けなければならないこと、それは「いかにして光と影を捉えるか」です。
前回のインタビュー以来、お使いの機材やワークフローに変化がありましたか?もしあったなら、どのような変化ですか?
ちょうどカメラとストロボのシステムを全面的に刷新したところです。 以前はSONY A7IIを使い、レンズは単焦点のSEL28F20 (28mm)とSEL50F14Z (50mm)、そしてCANON EF70-200mm F4L USMを組み合わせていました。昨年末、カメラの液晶モニターが故障し、長年使っていた安価なストロボもついに寿命を迎えたため、カメラをSONY A7CIIに買い替えました。ストロボも新調し、TTL対応のワイヤレスフラッシュトリガーも導入しました。
ストロボに関してはまだ新しいライティングを模索中ですが、カメラを買い替えた効果は劇的でした。 まず、A7CIIはアンダー(暗部)の階調が非常に豊かなので、以前のようにストロボやレフ板を駆使して顔や体の不自然な影を消す必要が少なくなりました。つまり、ストロボなし、あるいはレフ板を軽く当てるだけで理想の写りが得られるようになったのです。これは撮影時間の短縮に大きく貢献しています。また、逆光耐性も向上したため、より積極的に逆光での撮影に挑戦できるようになりました。
さらに、フォーカス面でも大きな変化がありました。以前はマニュアルフォーカス(MF)のみでしたが、新機種のオートフォーカスはドールの瞳を正確に捉えてくれます。これにより、毎回三脚を立てる必要がなくなり、手持ちでの撮影が可能になりました。三脚を設置できないような狭い場所では、これが大きなアドバンテージになります。
これまでは「背景の構図を決定→ドールを配置→三脚を固定→MFでピント合わせ→ライティング調整」という手順でしたが、今は「ドールを配置→手持ちで撮影(レフ板のみ)」という、より軽快なフローも選べるようになりました。もちろん、天候や光源によって多少複雑な手順になることもありますが、自由度は格段に上がっています。
現在、ご自身の写真撮影において、技術的に最も難しいと感じていることはなんですか?
すべての写真家が生涯学び続けなければならないこと、それは「いかにして光と影を捉えるか」です。
私自身、まだまだ上手くできているとは思えません。 これは、先ほどお話しした機材よりもずっと重要なことです。もしドールを撮りたいけれど、高価な一眼レフやストロボ、三脚にお金をかけたくないという人がいたら、こうアドバイスします。「発泡スチロールの板を数枚用意してドールの周りを囲み、上からデスクライト(できれば2灯)で照らして、スマホで撮ってみて」と。これだけでいい感じの光が出ます。 高いカメラを買っても、結局「ただ背景がボケているだけの写真」になってしまう人は正直いうと結構多いです。高価な機材を手に入れたからといって、光と影を勉強しなくてよいわけではありません。
野外では、晴天ならレフ板の半透明部分を使って減光し、ストロボを併用してドールが影で真っ暗にならないように調整する必要があります。逆に曇天では太陽光が柔らかく分散するためストロボはあまり必要ありませんが、影が乏しいとドールの立体感が失われ、その場に実在している感覚が薄れてしまいます。まるで巨大なテレビやモニターの前にドールを置いて撮ったかのような、不自然な仕上がりになってしまうのです。せっかく遠出したのに、家で撮ったのと変わらないような写真になってしまうのは、少し悲しいことですよね。適切な光と影を表現することは、写真に力強さを与えるだけでなく、ドールを背景に馴染ませ、自然に見せるための不可欠な要素なのです。
個人的には、夜間に光と影の効果を学ぶことをお勧めします。例えば、オフィスビルやライトアップされた橋が見える夜の街角。夜は周囲が暗いため、ストロボの効果が昼間よりずっと顕著に現れます。ドールが暗くなりすぎず、かつ背景と調和する絶妙な明るさを探る。何度も試行錯誤が必要ですが、時間はたっぷりあります。夕暮れ時や雲に隠れる太陽のように光が刻々と変わることはなく、夜の光は人間が作り出したものなので、非常に安定しています。街路灯など、周りの電気が消されない限り、納得がいくまで挑戦し続けられます。また、人目が気になりにくいのも利点です。
ただ、夜での撮影においては、撮影地の治安は国や場所、そして性別によっても異なりますので、特に女性の方は複数人で行動するなど、安全を第一に考えてください。
制作プロセス全体において、ポストプロダクションはどれほど重要ですか?
「レタッチの割合が少ないほど、写真家の実力を示せる」と考える人もいるでしょう。その考え方は基本的には正しいと思います。しかし、レタッチに頼らなければどうしても表現できないものもあります。
私の写真では、ドールの球体関節は通常見えないように処理しています。また、使用しているのはVOLKSのDDDYやMDD、あるいはDOLLBOTのDBCボディですが、その形状は元の製品とは少し異なります。女性の肉体的な曲線美を正しく表現したい、そして自分の理想の体型を再現したいという強い思いがあるからです。 正直なところ、これはあまり効率的なやり方ではありません。すべての写真において、ドールの体に多かれ少なかれレタッチを施す必要があるからです。また、背景に構図上の論理に合わないものがあれば、それも修正します。例えば、花とドールを撮っている時に余計な植物が映り込めば消しますし、花のボリュームが足りないと感じれば増やしたりもします。
私のワークフローでは、まずLightroomで明暗や色調、細部を調整し、次にPhotoshopでドールの体型修正や関節消しを行い、最後に再び全体のトーンを整えます。
以前はすべて手作業でしたが、今はAIを避けて通ることはできません。現在はPhotoshopの「生成塗りつぶし」を利用しています。AIがすべてを完璧にするわけではありませんが、選択した一部を自然に変更してくれます。私にとってAIはあくまで「作業時間を短縮するための助手」であり、制作のすべてを委ねる存在ではありません。AIに任せるのは、あくまで以前は手動で行っていた修正作業の一部です。AIに対する私の考えについては、次の質問で詳しくお話しします。
日本および海外における、現在のドールフォトグラフィーの現状について、どのように捉えていますか?
そもそも、ドールを所有している人は多くありませんし、その中で撮影を、さらに野外撮影まで楽しむ人はもっと少なくなります。野外撮影は無限の背景と強力な自然光が得られる一方で、重い機材を持ち運ぶのは非常に重労働だからです。日本では、自宅の背景に飽きたら時間貸しのレンタルスタジオという選択肢もあります。そこには撮影に適した背景や大型LEDライトが完備されており、雨風を気にせず快適に撮影できます。
また、最近はAIで背景を作る人も増えています。家で撮ったドールを、AIを使って美しい花壇や海辺に配置したり、サーフィンをさせたり、食事をさせたりといったことも可能です。AIによる光の処理はすでに非常に高度で、あと2年もすれば私の写真など誰も見なくなるのではないか、と感じるほどです。
これは19世紀から20世紀初頭にかけて、写真技術の発達により画家がその地位を追われていった歴史を思い出させます。今、AIが写真に取って代わろうとしているのかもしれません。しかし、周知の通り、絵画は写真に完全に取って代わられたわけではありませんでした。現実を正確に記録する必要がなくなった画家たちは、抽象主義などの「写真には表現できない」分野へと発展していきました。それらは単なる記録ではなく、画家の心象や感情を写し出す媒体となったのです。 例えば、クロード・モネの絵画が描く光影は、非現実的で、カメラでは捉えられません。物理的な影があるはずの場所に、彼はレフ板を当てたような柔らかな光を描き込みます。それは現実的ではありませんが、非常に美しく私たちの目に映ります。今日、私たち写真家も、ストロボやLEDを駆使して自らの心象を表現しています。AIが巨大なデータベースであり「正解」の集合体であるならば、写真界にもその正しさを打ち破る「ピカソ」のような存在が現れるはずです。
もっとも、私たちは皆がピカソになれるわけではありません。芸術性の話はさておき、将来的に趣味としてのドール撮影はどうなるでしょうか。「美しさ」や「可愛さ」だけを求めるなら、多くの人がAIに委ねるようになるかもしれません。そうなれば外出する理由はなくなり、街のスタジオも閉まってしまうでしょう。 しかし、これからの撮影行動の一つのあり方として、撮影そのものが「大切な体験」になるのではないかと考えています。愛するドールと一緒に各地を旅し、お気に入りの景色の中に身を置く。撮影はその付随的なものになるのかもしれません。
私にとって、ドールは大切な「パートナー」です。彼らと一緒に各地を歩き、共に作品を作り上げる。そこにはAIが生成したものではない、実在する場所の記憶があります。それが私に大きな達成感を与えてくれるのです。 長々と話しましたが、AIを否定しているわけではありません。私が年老いて外出できなくなった時や、病気や怪我をした時には、AIに背景を頼ることもあるでしょう。AIは、そんな時の助けにもなってくれるはずですから。
私にとって、ドールは大切な「パートナー」です。彼らと一緒に各地を歩き、共に作品を作り上げる。
今後数年間でさらに発展させていきたいと思われるプロジェクトやアイデアは、現在何かありますか?
これはとてもプライベートな話なのですが、ここ数年のうちに自分の家を持ちたいと考えています。決して余裕があるわけではありませんが、もし部屋の中に自分専用の撮影スタジオをいくつか作ることができれば、今後の撮影活動において大きな助けになると思うからです。
もう一つは、日本の47都道府県すべてで撮影した、各県数枚ずつの写真で構成する写真集を出版することです。まだ訪れたことのない県もありますが、ちょうど今月、九州の宮崎県へ行ってきました。未踏の地はあと残りわずかです。最後まで頑張って走り抜きたいと思っています。
写真の舞台裏
九州の田園地帯にある静かな橋を舞台にしたこの写真は、まんじゅう氏の現在の作品を特徴づける多くの要素を映し出しています。入念なロケハン、繊細なストーリーテリング、自然光、そして現実とポストプロダクションの境界がほとんど感じられないような融合、そのすべてがこの一枚に欠かせません。今回の「写真の舞台裏」特集では、作者がこの作品制作の背景にある技術的・創造的なプロセスを語ります。
この写真の本来のコンセプトは何でしたか?
この写真のロケ地は、日本の九州、大分県日田市です。Googleマップのストリートビューでも、私の写真とほぼ同じ視点の風景を見つけることができます。 私はこれまで、制服姿の女子学生二人が日本の田舎の風景に溶け込んでいる写真をよく撮ってきました。
これは私の最も得意とするテーマの一つです。ただ、これまでは「白い上着に紺のスカート」というセーラー服が多かったのですが、今回の「黒いセーラー服」は初めての試みでした。これまでの制服に比べて黒は色が暗いため、見る人に「青春の輝き」という印象を抱かせるのは難しくなります。また、スカートの丈も長めにして、女の子たちが少し控えめで落ち着いた印象に見えるようにしました。
そのため、明るい背景を使って、黒の面積が多い人物を引き立たせようと考えました。また構図に関しても、よく撮る「楽しげな会話」というテーマより、この黒い制服には「神秘的な対話(内緒話)」のようなストーリーが合うと感じました。左側の女の子は少し羞恥心を覚えているようで、右側の女の子は活発に見えます。
右の子が何かを言って左の子が照れているようですが、その内容は分かりません。彼女たちがどんな内緒話をしているのか、想像してみてください。
今回の撮影に向けて、どのような準備をしましたか?
撮影時期は2025年6月です。もともと、一度も行ったことがなかった大分県を旅する計画を立てていました。 大分は九州の北東部に位置し、大都市の福岡からも距離があるため、観光客が比較的少なく交通も少し不便です。しかし大分駅からJR九州の電車に乗ると、放射状に多くの路線が伸びており、各都市を繋いでいることが分かります。私は車を持っていないですし、日本の電車に揺られて車窓を楽しむのが大好きなので、今回の旅も主にJR九州を利用して各地を巡りました。 ただ、電車の本数が多くないため、日田に到着したのは夜の8時過ぎでした。翌朝の7時過ぎにはまた駅に戻って旅を続けなければなりません。前夜は荷物の整理などで寝たのが23時を過ぎていましたが、朝の5時には起床しました。2時間ほどの撮影時間を確保したかったのと、通行人の視線を避けたかったからです。実は写真の背景には、前夜に宿泊した旅館も写っています。撮影地のすぐ近くに泊まれたおかげで、これでも少しは楽ができました。
なぜここを撮影地に選んだかというと、この橋の両側に「手すり」がないことに気づいたからです。Googleマップでロケハンをしていた時にこの点に惹かれました。なぜ手すりがないかというと、上流で大雨が降り川(三隈川)の水位が上がった際、橋が完全に水没するからです。その時、手すりがあると流木などが引っかかってしまうため、あえて設置しない構造になっています。これは日本で「沈下橋」と呼ばれています。 手すりがないと、ドールを置いた時にドール自体の小ささに気づきにくくなります。一種の視覚的錯覚を利用しているのです。手すりがあれば橋の実際の幅が分かり、ドールとの対比でサイズ感がバレてしまいますが、手すりがないとその基準が失われます。 ただ、撮影現場で気づいたのですが、ドールを直接地面に置くと、カメラを地面スレスレに設置しても川の風景を一緒に写し込むことができません。それでは構図として「これが橋である」ということが伝わりません。そこで、ドールをカメラの三脚の上に立たせて撮影し、後で背景と合成する方法を選びました。これにより、カメラを地上1m〜1.5mほどの高さに設定して撮影することにしました。
撮影の過程で、どのような課題に直面しましたか?
普段は、ドールを設置してカメラのモニターを確認し、ポーズが少し違うと感じては微調整してまたモニターに戻る……という作業を一時間ほど繰り返すこともあります。しかし今回は、事前にドールのポーズを脳内でシミュレーションしていたため、特に困難はありませんでした。当日の朝の光は非常に柔らかく、風もほとんどありませんでした。これ以上ない最高の撮影環境でした。
この写真の撮影環境について、詳しく説明していただけますか?
ドールを三脚の上に置いた時点で、後でレタッチ合成を行うことは決まっていました。ドールは小さいため、ドールにピントを合わせると背景がボケすぎてしまいます。そのため、まずドールを撮り、次に背景を撮るという、最低でも二枚の写真が必要になります。通常はドールの撮影に時間がかかり、背景の撮影は比較的早く終わります。 この写真は順光で、すでに柔らかな日光がありましたが、レフ板に加えてフラッシュも使用しています。フラッシュを地面に向けて弱めに発光させ、そのバウンド光でうつむき加減なドールの顔を照らしました。背景を撮る際は、ドールが実際に立っている位置を想像し、その地面にマニュアルでピントを合わせます。レンズはCanonの70-200mm F4を使用しました。望遠レンズを使うことで、背景の要素を画面中央に効果的に凝縮させることができます。また、カメラからピント位置まで通常2〜3mの距離があるため、背景を適切にボカすために絞りは開放のF4に設定しました。
この写真のポストプロダクションには、どのように取り組みましたか?
主に、人物を背景に合成し、ドールを支えていたスタンドや、服の形を整えるために使っていたクリップを消去する作業です。先ほど述べたように、この橋には手すりがないため、人物の大きさは比較的自由に決めることができます。少し大きくしたり小さくしたりしても、違和感が出にくいのです。 背景に合成する際、現地で撮影した素材同士なので光や影は比較的自然になりますが、それでも多少の不自然さは出ます。その際、Photoshopの「調和(ハーモナイズ)」機能を試すことがあります。背景の光影に基づいてドールの光影を再定義してくれますが、これに頼りすぎるとおかしな結果になることもあるため、その場合はAIレイヤーの不透明度を70%や50%に下げるようお勧めします。また、足元の影を作るのにもこの機能は非常に便利です。
今、最終的な結果を見て、何か改善すべき点があると思いますか?
ドールの足元の影を、もう少し自然に作れたのではないかと思います。また、川の両側の反射が強かったので、撮影時にC-PLフィルターを使っていれば、その問題を解決できたかもしれません。









